不動産取引の状況と今後の動向 

2005年3月の月刊不動産鑑定への出稿記事です。 

広島地区の不動産の取引の状況はつぎのとおりで ある(市街地中心部とマンション立地地域に限定)。

〔市街地中心部〕;

広島の立地条件を反映して,他都市と比較してJREIT や私募ファンドなどの投資用不動産の取引は少なく, 30億円程度を限度とするオフィスビルが中心で, ほんの数えるほどしかないのが現状である。

水面下で はさまざまな物件が物色されており,期末決算にあわ せて取引が発生する可能性が強い。後発地域として広島地区の投資用不動産の取引は今後他都市並みに増えていくかどうかは定かでないが,今後の動向如何によるものと考える。

〔マンション取引の動向〕 :

広島の不動産取引の牽引車となっているのが,マン ション市場であり,住宅地域・商業地域を問わず都心回帰塾が中心となっている。とくに,利便性の高いマ ンション適地地域の素地は不足し手当てしにくい状況にあることから,地価が下落する中でマンション素地 だけが上昇している傾向にある。最近の取引事例によると相続税路線価の1 - 4倍程度の価格で売買されて おり,標準化補正を施すと相当高い値段になるものと推定される(表、広島市内マンション素地等事例一覧 参照)。

〔都心回帰型マンションの動向〕 :

長引く_景気の低迷と各企業・団体の統廃合・リスト ラによる組織の体質改善の必要性,バブル崩壊後10年以上も続く土地下落による投資面からのマンション立 地の可能性,高齢者層の医療などの生活利便性に基づく市街地中心部への住み替えの増加などの要因を反映 して遊休資産をはじめ福利厚生施設の有効利用,.売却などによるマンション開発が進展し,都心回帰型マン ションは市街地静性化のトップランナーに位置づけされている。

一方,広島のマンション需要は高齢者,団 塊の世代に加え団塊世代の子供が購買層に入るなど底堅い状況にあり,旧市内の新築供給戸数は今後も従来 どおりの年間2000戸程度で推移するものと予測される。

以上の要因を考慮すると,住宅地域はもとより商業 地域あるいは幹線街路沿いまたは倉庫・工場の転用など用途地域を問わず,全方位的な地域でマンション素 地の需要圧力が強い状況にあるといえる。しかし,市街地が狭い上に今日までの開発供給の結果,マンショ・ ン素地の供給に限度がある。

とくに,マンションの供給が集中し,人気の高い市街地中心部のマジション適地の取得は困難な状況にある。環境や法規制の要因を加味すると当面,マンショ ン素地が中心となって地価の牽引の役割を担い地価上昇の引き金を引くものと予測する。

結び :

昨今の景気の状況と広島市の現状をふまえると広島の地価は,下落基調から脱しきれていないものの, 地域的な温度差や用途あるいは立地条件にも左右され るが,マンション素地を中心に底が見えていると考える。 

また,今後実行に移される大型プロジェクトの展開 によって,広島は国際平和にふさわしい都市集積が図られて, 「地価の下落」から解放され, 「鶏鳴が闇を払 い,暁を告げる」のを聞くことができるのも近いと予測する。