有限会社森嶋鑑定事務所代表者の感想等

                   平成24年2月24日


「小さなパイは誰のもの?」 についてのレポ一ト

          (フォ一ラム20122. 1号掲載)   森嶋 久雄

 

最近の都市の商業市街地は,規模の大きなターミナル駅、とくにJ R駅を中心とする大規模商業施設開発が促進され、大きく変貌しています。

 

 私の住んでいる広島市もその例にもれません。

 

 一時停滞していたJ R広島駅周辺開発が、 最近、急激に進展を見せており、動向が最も注目される大型プロジェク トとなっています。

 

 私自身も、これら再開発や区画整理の一部に関係している経緯から、強い関心を持っています。

 

この何年間に機会をみて、全国の主なJ R駅関連の大規模開発商業施設を訪れてみましたが、開発後の経過や現状、今後の発展等に問題が指摘されそれぞれに明と暗があるようです。


私は、そのような状況にある中、表題の文章が目に留まり、標題の副題として


-2011年大型商業開発にみる人の流れ-


となっていることに、興味が惹かれました。

 

とくに、福岡と大阪の拠点都市における二つのJ R駅の大型商業開発に伴う集客効果による街の活性化についてであります。

 

 二つのJ R駅を基軸に開発された 「期待の大型商業施設」が、それぞれ開業してから数ヵ月経ち街がどのように変わったのか、とても気にかかりました。

 

 内容によると、九州新幹線全線開通と同時に開業したJ R博多駅商業施設J R博多シテイ は、新幹線利用により広域から福岡の街に人が集まる来防者の回遊が、J R博多シティだけでなく天神にも及ぶ相乗効果が期待されたが、新幹線開通効果は、それほどでなかったようです。

 

関係者の話として、


①九州では、 福岡一極集中の傾向があり、 従来から九州各地から 福岡に買い物に来ていたので、 新たな市場拡大は期待ほどでない。

 

②交通網が発達しているので新幹線以外の交通手段で手軽に福岡に行ける。


③中国地方等の消費者は、わざわざ出かけるなら大阪や東京に行く傾向にある。

 

との見解が指摘されています。 博多シティの百貨店・ファッションビルの売り上げは、目標を上回り、まあまあの状況であったのに対し、天神の百貨店・ファショ ンビル等の商業施設は、軒並み売り上げ減少のマイナス傾向に推移したとも指摘されています。


このことから、地元の人間は、

 

①一極集中の長かった天神商業は、J R博多シティ の対策を怠り、進化の努力が甘かったこと。

 

②一時J R博多シティに行った客もほとんど天神に戻りつつあること。

 

③しかし集客が戻ってきた商業施設と戻ってこなかった商業施設に分かれ、その差が歴然としてしまったこと。

 

④このような客の判断は、今後の天神の運命を大きく変えるのではないかと、天神の苦戦の様子を語っておられます。


大型開発・新幹線が 街に必ずしもバラ色の明日を約束してくれるものでないという厳しい現実が 福岡にあることを物語ってくれていると結論付けています。

 

一方のJ R大阪駅の大規模開発によって進められた商業施設の開業は、集客はもとより売り上げも予想を上回る結果となっているとのことです。


集客は、福岡と異なり、ドーナツ型で、足元の大阪市内の客より隣接府県エリアからの来館が多く、足元の大阪の客層が思ったより少なかったといわれているようです。

 

 これは、この施設を迎え撃つ他の大阪市内商業施設が大阪ステーションシティ開業を大きな脅威ととらえ、多くの施設が事前の準備としてリニューアル等のテコ入れを行っていたので、大阪の人々は、大阪駅もチェック しつつも、なじみの市内各エリア商業施設のリニューアルを楽しんでいた結果といえるようです。

 

 

天神の商業施設では、JR博多シティヘの対抗策を打った施設が多くなかったことが敗因として指摘されています。

 

 


 大阪における他のターミナルエリアの売り上げは、大きな落ち込みがなかったといわれ、 競合する大阪駅近隣のリニューアル増床した百貨店は 好調であり、地下鉄立地の心斎橋エリア商業は、大きく落ち込んだ状況にあったとのことです。

 

 

パイの拡大は、パイの食い合いであることを考えると、交通の利便性は、商況の浮沈に大きく関係してくると指摘しています。


従来の大規模な商業開発は、街に人を呼び街を元気にすると考えられてきたが、21世紀のファァーストステージである2011年の開発は、パイを拡大することは、幻であることを物語っているのではないかと述べています。


小さいパイを誰が手に入れるのか?」そのために商業者間の熾烈な競争が展開される。

 

 福岡、大阪で見られた傾向は、同じ店がAエリアに出店しつつ、 新開発のBエリアに出店していると、総じてどちらの店も売上を落とす結果となっている。

 

 消費者は、新しいものや珍しいことに関心を示す。パイの食い合いは、開発側には厳しい戦争であるが、消費者にとっては、商業が進化するステージといえる。オリジナルを提供できる者だけがパイを手に入れる時代になっていると述べています。